研究概要 |
我々は、高い性能を有する新規な電子輸送材料(有機n型半導体)の開発を目的とし、芳香環の水素をすべてフッ素化した全フッ素置換芳香族化合物(分岐型および直線型)を設計し、その合成に成功した。合成した分子は、種々のスペクトルにより構造決定を行い、熱分析を行ったところ、分岐型のフェニレン化合物は、100℃以上のガラス転移温度を有することがわかった。これらの化合物を電子輸送材料として用いた有機EL素子を作成し、その性能を評価した(Alq3を発光層、TPTEを正孔輸送層、LiFを電子注入層、アルミニウムを陰極、ITOを陽極として素子を作成)。その結果、分岐型分子ではその電子親和度が増すに従って電子輸送材料としての性能が向上することがわかった。分岐型分子の中では、1,3,5-trifluoro-2,4,6-tris(perfluorinated p-terphenyl)benzeneが最も良い性能を示し、この分子を用いた素子の最高輝度は、駆動電圧24.4Vで2860cd/m^2であった。一方、直線型分子は、分岐型分子に比べ優れた電子輸送性を有し、perfluorinated p-sexiphenylを用いた素子の最高輝度は、駆動電圧10Vで19970cd/m^2にまで達した。これは、現在最も頻繁に使用されている電子輸送材料(Alq3)とほぼ同程度の性能である。今後は、分子構造を最適化することにより電子輸送材料としての性能を向上させ、実用化をめざしたい。
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