我々は、高い性能を有する新規な電子輸送材料(有機n型半導体)の開発を目的とし、芳香環の水素をすべてフッ素化した全フッ素置換芳香族化合物を設計した。平成12年度には、種々の全フッ素置換フェニレン化合物を合成し、これらの化合物が有機EL素子の電子輸送材料として有効であることを見出した。平成13年度には、これらの化合物が電子輸送材料としてだけでなく、ホールブロッキング材料(特に燐光材料を用いた素子において)としても有効であることがわかり、今後の発展が期待される。また、有機EL素子とともに最近注目されている有機電界効果トランジスターにおいて、最も重要な材料の一つであるオリゴチオフェンの全フッ素置換体の合成に成功した。チオフェン環へのフッ素の導入は、ブロモチオフェンをリチオ化し、N-fluorobenzenesulfonimideと反応させることにより、効率良く行うことができた。合成したbuilding blocksをStilleまたはUllmann反応によりカップリングすることにより、全フッ素置換オリゴチオフェンを合成した。電気化学測定より、全フッ素置換オリゴチオフェンは、オリゴチオフェンよりも低いLUMOを持つことが明らかになった。一部の例外を除き、オリゴチオフェンはp型の半導体特性を示すが、全フッ素置換オリゴチオフェンはn型の半導体特性を示すことが期待される。今後は、これらの材料を用いた有機電界効果トランジスターを作製し、その性能を評価する予定である。また、得られた結果をもとに分子構造を最適化し、高い性能を有する有機n型半導体を見出し、実用化を目指したい。
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