パラジウム薄膜の作成に関しては、基盤にロジウム(111)面を用いることによって、原子1層厚の薄膜作成に成功した。この薄膜は基盤のロジウム(111)の格子定数を持ち、(111)方位を有している。すなわちパラジウムバルクの(111)面とは格子定数が異なるため、水素や炭化水素の反応に関して特異性が期待される。現在は構造が膜厚によりどのように変化するかを低速電子回折とオージェ電子分光により調べている。さらにこの薄膜における炭化水素反応のプロトタイプとしてアセチレンの吸着を、さらに吸蔵水素によるその水素化反応の効率を調べる予定である。 水素の吸収等、表面挙動を調べるために振動分光の研究も進めている。水素をニッケル(111)面に吸着させることにより水素分子は解離吸着して(2×2)-2H構造と(1×1)-H構造をとることがよく知られている。水素原子はその質量の軽さから吸着ポテンシャルの井戸の中に収まらないで、量子的に非局在性を示す可能性がある。ここでは水素のバルクへの吸収ポテンシャルを調べるために、表面垂直振動モードの測定と解析を行った。特に倍音振動を観測することにより、その形状を詳しく調べることが可能である。その結果、(1×1)-H構造の水素(飽和吸着状態に対応)では、バルクへの吸収障壁が〜1.4eVと見積もられた。この値は活性化により表面吸着水素はバルクへ吸収されず真空へ会合脱離することを示しており、ニッケルが水素を吸収しにくいという事実と対応している。パラジウム薄膜に関してもその構造が解明された後、同じような振動解析を行うことによる吸収ポテンシャルの研究を行う予定である。
|