平成12年度に遷移金属表面における水素の挙動を理解する一歩として、その振動状態に関する研究を行ってきた。平成13年度ではその振動励起状態の動的振る舞い、すなわち緩和現象の解明を行った。振動励起状態の緩和速度は、拡散や吸収といった水素の挙動と密接に関係しているため、その解明は吸収効率に対する基礎となる。実験は代表的な遷移金属であるニッケルの(111)面と(100)面を用いて行った。その結果、振動緩和は基盤(ニッケル)のフォノンを介して進行し、その速度は非常に速く-10^<-14>秒と見積もった。このことはおそらく基盤の種類に依存しないと予想されるため、水素の挙動を理解する上で、基盤との相互作用を考りょする必要性を示している。 一方、パラジウム薄膜の作成に関しては、水素を吸蔵しないロジウム単結晶の(111)面上にパラジウムを加熱蒸着することにより行った。薄膜は層単位で進行し、その定量はオージェ電子分光を用いて行った。その結果、1〜5原子層のパラジウム薄膜の作成が可能となった。含まれる不純物はオージェ電子分光により、0.1%以下と見積もられた。現在、このパラジウム薄膜による水素吸収能について実験を行っている。
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