一分子内に複数の官能基(分子間相互作用部位)を発散型に有する配位子を多数合成した。水素結合や金属配位結合によるネットワーク化挙動をそれぞれについて検討した。配位子の形により、一次元相互作用鎖、二次元相互作用ネットワーク、3次元ダイアモンド格子などを作り分けられることが明らかとなった。このように分子間相互作用でネットワーク化した固体は、結晶格子内に多くの隙間を持ち、ゲスト分子吸着能を有する多孔質有機固体となる。ゲスト分子の吸着および脱離は可逆的である。一般に多くの水素結合ネットワーク型有機固体は、そのゲスト分子吸着過程で劇的な相変化を伴う。また、極性官能基をもつ有機化合物に対し高い親和性を有する。しかしながら、本研究で得られた水素結合性多孔質有機固体の中には、全く逆の性質(相変化を伴わず、非極性有機化合物を優先的に取り込む性質)を有するものも見出された。これら水素結合性の有機固体については、現在、金属配位ネットワークへの変換を試みている。一方、カルボキシレート型多座配位子を利用した金属-カルボキシレート結合のネットワーク化による多孔質有機固体の構築にも成功した(論文作成中)。パラジウム、ランタン、白金、銅をはじめとする、種々の金属を含む有機固体を簡便にかつ、定量的に得る方法を見出した。ネットワーク化することにより、種々の溶媒に対する溶解性がほとんどなくなり、かつ、熱安定性やゲスト分子吸着能が飛躍的に向上することが明らかとなった。また、このような手法によるホスフィン-低原子価金属結合のネットワーク化にも成功した。今後はこれら金属錯体を利用した新しい有機合成について展開していく。
|