研究概要 |
本年度は界面分光計測に先立ち,チオール化DNAを金基板上に固定化した試料系の構築を第一目標として研究を進めた。まず,チオール化DNAによる金基板の修飾条件を最適化するためには,その修飾量を定量する必要がある。そこでチオール化DNAに代わる水溶性のチオール誘導体,6-メルカプトヘキサノール(MCH)を用いて金基板を修飾し,その還元的脱離にともなう基板重量変化を電気化学水晶振動子マイクロバランス法(EQCM)によって検討した。修飾操作後,基板を電解質水溶液でリンスせずに脱離させたところ,123ng/cm^2の重量変化が観測された。この値は,STM観察から得られた構造に基づく修飾量の理論値101ng/cm^2を上回っており, MCHがS-Au結合による化学吸着に加え,過剰吸着していることを示唆している。一方、修飾操作後,基板を電解質水溶液でリンスした場合,84ng/cm^2の重量変化が観測された。このことから,過剰吸着したMCHはリンス操作で取り除くことが可能な物理吸着であることが判明した。チオール化DNAで修飾した金基板に対して同様の測定を試みたところ,物理吸着によるチオール化DNAの存在によって,理論的に予想される最大修飾量の30%程度しか修飾されていないことがわかった。 今後,修飾条件の最適化を図るとともに,第二高調波発生を利用したDNAの状態解析へと研究を展開する。
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