研究概要 |
本年度は,イオン会合ミセル分配-キャピラリー電気泳動法に関する基礎研究を行った.以前の研究で有機陰イオンのミセル分配現象を明らかにしたので,本研究では有機陽イオン-有機陰イオン間で生成するイオン会合体の非イオン界面活性剤ミセルへの分配現象を克明に解析した.それら生成するイオン会合体は,反応による電荷の減少,疎水性の増加のために,有機陰イオンと比較して10〜100倍ミセルとの結合性が高いことが分かった.また,イオン会合体の分配反応は疎水性イオン会合反応よりも高い反応性を示すことを見いだした.一方,非イオン界面活性剤の種類による比較では,界面活性剤の親水性-親油性バランスとは大きな相関は認められなかった.この結果は,有機陰イオンのミセルへの結合反応で得られた結果に準じるものであった.対陽イオンの種類による比較でも対陽イオンの疎水性などの特性はあまり反映されず,イオン会合反応により生成するイオン会合体の疎水性評価を評価する必要性が生じ,今後の検討課題となった. この研究と平行して,陰イオン界面活性剤を用いるミセル導電クロマトグラフ法により,薬物中のハロペリドールの分析法を開発した.ハロペリドールから分解生成するパラベン等との分離性能が高く,分析時間も1試料あたり約15分であり,優れた分析法となった.水溶液内で生成するイオン会合体の反応をクラウンエーテル錯体-ピクリン酸系で解析し,今後のミセル分配を検討する上での貴重な成果となった.本研究で用いる電気泳動移動度測定法と平衡反応解析法のバリディティー立証を目的として,水溶液内で不安定な化合物であるフェノールフタレインをとりあげ,よく知られていなかった酸解離反応の詳細を明らかにすることに成功した.以上の結果から,本解析法が優れた方法であることを示した.
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