セントロメアは染色体分配に本質的な役割を行うDNA-タンパク質の複合体である。高等脊椎動物のセントロメアの研究では、酵母で有用に用いられている遺伝学的機能解析法を用いることが困難であるため、セントロメアタンパク質の細胞内での解析は遅れており、高等脊椎動物のセントロメアの機能を実現する機構については、多くが未知である。我々は、哺乳類細胞の数十から数百倍の高頻度に相同組換えを起こすニワトリB細胞由来のDT40細胞を用いることで、高等脊椎動物のセントロメア機能を遺伝学的に解析することを試みている。本年度は、重要なセントロメアタンパク質であるCENP-Cの温度感受性変異株の作成を行い、現在までに4種類の変異株の単離に成功した。温度感受性変異株は34℃で通常に生育するが、43℃では温度移行後24h以内に80%の細胞が死滅した。我々が作成したCENP-Cのノックアウト株では、多くの細胞がM期で異常を示した後死滅したが、間期に死滅する細胞も観察された。温度感受性変異株では、M期の異常よりはG1/S期で増殖を停止して死滅した。これは、CENP-CはG1/SとM期で機能するが、温度感受性変異はG1/S期特異的な変異であることを示唆している。さらに、レトロウイルスベクターを用いて、変異を抑圧する遺伝子の単離を試みた結果、SUMO-1遺伝子の大量発現により、CENP-C変異が抑圧された。SUMO化が行われないDT40細胞の解析を行った結果、細胞分裂後期に異常を生じており、SUMO化と細胞分裂の関連性が示唆された。
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