本種は、約30年前に北米より移入し、現在あらゆる琵琶湖岸で大発生している。本来、沈水植物群落が優占する浅い湖沼に適応した雑食性魚類である。多様な湖岸形態を持つ湖に、本種がどのように適応しているのかを明らかにするため、湖岸形態の異なる2ヶ所において、定期的な潜水観察と行動の集中観察を行った。具体的には、岩礁地帯である海津大崎と小規模なヨシ群落を有する大浦において、毎月1回の40mラインセンサスを行い、沈水植物群落の種組成と立体構造の季節変化、およびブルーギルの場所利用を観察した。7月には繁殖コロニーでの行動観察を、8月〜9月には幼魚を対象とした採餌行動を観察した。6月に標本採集を行い、岩礁域における成熟個体数の定量化を行った。 この結果、岩礁域とヨシ群落沖では、植物群落の規模や構造が大きく異なるが、ブルーギルの個体群構造に違いはなく、両湖岸で異なる採餌戦術が観察された。定性的な行動記載は完了したので、来年度は定量化を行う予定である。 また、繁殖コロニーの形態にも違いが見られた。岩礁域では、本来の繁殖に適した砂泥底がないため大規模な集合巣は形成されなかったが、同種他個体による卵捕食行動も少なかった。これに対し、ヨシ群落周辺では、大規模な集合巣が形成され、同種他個体による卵捕食行動も多く、卵保護行動のほとんどが捕食者の追い払いであった。 定期観察により、6年前と比較して植物群落優占種の変化が明らかになった。すなわち、北米産のコカナダモから、在来種のクロモへと優占種が変化し、沈水植物群落の立体構造の季節変化パターンに大きな変化が見られた。コカナダモは夏季に成長のピークを迎えて秋季には衰退するが、クロモは秋季に成長のピークを示した。両湖岸でこの植物群落の消長のパターンに違いはなく、来年度は、このパターンとブルーギルの採餌戦術の対応関係を明らかにしたい。
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