研究概要 |
■カイガラムシヘの気象と植物の影響の解明 まず、土壌中窒素と水分量がミカン葉の性質に及ぼす影響を実験した。鉢植えミカンを、降雨処理が週1.01と1.51の2通り、および硫安付加量が0%と1%の2通りの計4実験区(自然光、25℃,70%r.h.)で生育させ、新葉の性質と食害(アブラムシやハダニによる)の有無を調べたところ、窒素含有率は食害によって減少し、食害のない窒素付加および多降雨区で高く、含水率と強い正の相関を示した。突き刺し硬度は、食害によって増加し多降雨で高く、両者間の相互作用もあり、含水率と強い負の相関を示した。炭水化物含有率は食害によって低くなった。次にこれら異なる生育条件のミカン葉にカイガラムシ成虫を接種し、1齢幼虫の定着後、2齢に発育するまで湿度30%r.h.と75%r.h.の2実験区に置いて生存率を調べた。低湿度では、落葉率が高く、落ちた葉に付いていた1齢の生存率は低かった。1齢幼虫の定着には葉の生育条件の影響は認められなかった。 これらの実験より、ミカン葉の性質は、降雨や土壌中窒素と平行して植食性昆虫の食害の影響を受け、うち窒素の付加はカイガラムシの発育初期の生存率を高めることが判明した。さらに低湿度によって落葉しやすくなり、葉上で固着生活をするカイガラムシの生存を低下させることが解明された。 ■冬期のカイガラムシと寄生蜂の生活史の調査 冬期の平均気温が異なる九州沿岸部・内陸部の果樹試験場などの無農薬野外ミカン園を、昆虫の繁殖休止期間前の12月に調査した。寄生率の予測式(長崎県口之津のミカン園データから研究代表者が作成)から、平成11年度の暖冬の影響でヤノネキイロコバチの寄生率が高くなると予測されていたが、実際口之津では高寄生率が得られ、予測を支持した。現在、樹ごとの葉の性質とカイガラムシの密度を調査中である。来年度4月に同様の調査をして生存・死亡個体数の変化から冬期のカイガラムシと寄生蜂の死亡率を推定する予定である。
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