今年度はマレーシア国・ランビル国立公園で現地調査を行った。調査した項目は3つあり、一つは既に設置されている52ha調査区の外側の地形を計ることである。この調査により、アオギリ科植物間にニッチ分化があるかどうか生息地を軸に解析する場合必要になる、地形情報が充実することとなった。2つ目の調査は52ha調査区に出現したアオギリ科植物の再同定である。アオギリ科植物と同定された植物をもう一度注意深く同定し直した。その結果いくつかの個体に同定ミスがあることが分かった。また、60mを越える大木となるHeritiera simplicifoliaは大きな木では種小名が示すとおり単葉を付けているが、中径木では掌状複葉を付けており、実生はやはり単葉を付けていたことが分かった。この興味深い葉形変化は今後調査する必要があると感じた。また、Heritiera simplicifolia以外にも興味深い樹形変化を行う植物がアオギリ科にはあることが分かった。最後に行った調査はアオギリ科植物とフタバガキ科植物のアロメトリー調査である。フネミノキ属植物とリュウノウジュ属植物の実生から若木を掘り返し、樹形・根系調査とアロメトリーを測定した。これらのサンプルは熊本県立大学の研究室まで持ち帰ってあるので、今後はサンプル中に含まれる炭素と窒素の比率などを調べる予定である。 以上に示した本年度採取したデータをもとにアオギリ科植物間にニッチ分化があるかどうか検証作業を行っている。
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