C_4光合成回路に関与するリンゴ酸輸送体の同定と機能特性の解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12740434
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 谷口 光隆 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (40231419)
• キーワード: C_4光合成 / 葉緑体 / リンゴ酸 / 輸送体 / トウモロコシ / シロイヌナズナ / ジカルボン酸 / 分化

研究概要

本研究はC_4光合成細胞である葉肉細胞と維管束鞘細胞の葉緑体内包膜においてC_4光合成中間代謝産物であるリンゴ酸の輸送を行っている膜タンパク質を同定し,その機能特性を比較することを目的としている.既にトウモロコシ葉より,両光合成細胞で各々特異的に発現しているリンゴ酸輸送体のcDNA候補を単離しているが,シロイヌナズナにおいても一次構造の良く似た膜タンパク質をコードしている遺伝子を見出した.シロイヌナズナ葉より,その遺伝子に相当するcDNAを単離し,酵母内で発現させ,リポソームへの再構成系を用いて輸送特性を解析したところ,高いリンゴ酸輸送活性を示した.しかしながら,基質特異性は既報の2-オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体とは異なっており,むしろジカルボン酸輸送体に近い特異性をもっていたことから,今回同定したシロイヌナズナ遺伝子がジカルボン酸輸送体をコードしているのではないかと推定している.トウモロコシのcDNAについても同様の解析を進めており,機能特性の差異が見出されれば,両光合成細胞内での生理機能について考察できるものと考えている.また,これらの膜タンパク質の部分ポリペプチドを大腸菌で発現させ,特異抗体を作製中である.得られる特異抗体を用いて,発現の細胞特異性・組織特異性,細胞の分化過程での誘導性についてウエスタン解析ならびに免疫電顕を行う予定である.

研究成果

• [文献書誌] Taniguchi,M.,Izawa,K.,Ku,M.S.B.,Lin,J.-H.,Saito,H.,Ishida,Y.,Ohta,S.,Komari,T.,Matsuoka,M. and Sugiyama,T.: "Binding of cell type-specific nuclear proteins to the 5'-flanking region of maize C_4 phosphoenolpyruvate carboxylase gene confers its differential transcription in mesophyll cell."Plant Moecular Biology. 44. 543-557 (2000)
• [文献書誌] Nomura,M.,Sentoku,N.,Nishimura,A.,Lin,J.-H.,Honda,C.,Taniguchi,M.,Ishida,Y.,Ohta,S.,Komari,T.,Miyao-Tokutomi,M.,Kano-Murakami,Y.,Tajima,S.,Ku,M.S.B.and Matsuoka,M.: "The evolution of C_4 plants : acquisition of cis-regulatory sequences in the promoter of C_4-type pyruvate, orthophosphate dikinase gene."Plant Journal. 22. 211-221 (2000)
• [文献書誌] Sentoku,N.,Taniguchi,M.,Sugiyama,T.,Ishimaru,K.,Ohsugi,R.,Takaiwa,F.and Toki,S.: "Analysis of the transgenic tobacco plants expressing Panicum miliaceum aspartate aminotransferase genes."Plant Cell Report. 19. 598-603 (2000)