研究概要 |
本研究は,NADP-マリックエンザイム型C_4植物の葉肉細胞と維管束鞘細胞の葉縁体内包膜においてC_4光合成中間代謝産物であるリンゴ酸の輸送を行っている膜タンパク質を同定し,その機能特性を比較することを目的としている.本年度の研究により,以下のような成果が得られた. (1)リンゴ酸輸送体の候補となる3種のトウモロコシcDNAがコードする膜タンパク質を酵母で発現させ,リポソームヘの再構成を用いて輸送特性の解析を行った.その結果,これらのタンパク質は2-オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体あるいはジカルボン酸輸送体と推定されるような基質特異性を持つ輸送能を示した.また,オキサロ酢酸も効率よく輸送した.これらの遺伝子は,細胞特異的に光応答性の発現誘導を示すことから,C_4光合成回路に関与している可能性が高いと推察された. (2)シロイヌナズナからも上記のトウモロコシリンゴ酸輸送体のホモログ遺伝子を同定している.再構成系を用いた組み換えタンパク質の取り込み活性測定により,これらのシロイヌナズナ膜タンパク質がトウモロコシと同様に,オキサロ酢酸に対して高い親和性をもつことを見出した.そのKm値は,単離葉緑体でのオキサロ酢酸取り込み時のKm値に近いものであった.したがって,2-オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体およびジカルボン酸輸送体がオキサロ酢酸輸送体としても機能しうると結論付けた. (3)上記のリンゴ酸輸送体の生理機能を明らかにするため,シロイヌナズナタグラインのスクリーニングを行った.その結果,各リンゴ酸輸送体遺伝子の破壊株をそれぞれ複数種単離することができ,現在その表現型を解析中である.
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