研究概要 |
重力屈性変異体zig/sgr4は花茎が節で側枝や花芽とは反対側に折れ曲がり、全体としてジグザグな形態を示す。シュートにおける重力感受には、重力方向に移動するアミロプラストを含む内皮細胞が必須であるが、zigではアミロプラストの分布/移動が異常である。本年度は原因遺伝子をポジショナルクローニングにより単離、相補性試験により確認し、さらなる解析を行った。ZIGは、酵母の液胞への小胞輸送に関わるv-SNAREであるVti1のホモログとして既に単離されていたAtVT11aと同一であった。酵母vti1変異体中でVti1pの機能の一部を相補しうること、根の細胞中でTGN,PVCに局在することなどが示されているが、植物体内での機能は未知であった。花茎の内皮細胞及び皮層細胞の微細構造を電子顕微鏡で観察したところ、野生型では細胞のほとんどが一つの大きな液胞(central vacuole)で占められているが、zigでは複数の液胞の存在、小胞の蓄積といった液胞構造の異常が見られた。特に野生型の内皮細胞ではアミロプラストが液胞膜に落ち込んでいるように見えるのに対して、zigではそのような動的な液胞構造が見られなかった。内皮細胞特異的に発現するSCRのプロモーターを用いてZIGを変異体中で発現させたところ、重力屈性反応は相補しアミロプラストの分布も正常であったが、花茎の形態は相補しなかった。このことは、内皮細胞で発現しているZIGが重力屈性反応に重要であること、それ以外の組織では花茎の形態に関与することを示唆している。重力屈性反応に内皮細胞における小胞輸送や液胞がどのように関わるのか、解析を進めている。
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