我々はシロイヌナズナを用いて花茎の重力屈性に異常を示す突然変異体(shoot gravitropism ; sgr)を多数単離し原因遺伝子の解析を行うことにより、重力屈性現象の細胞レベル・分子レベルでの解明に取り組んできた。その過程で、複数のSGR遺伝子が、花茎の重力感受細胞中で液胞の機能に密接に関係していることが明らかになってきた。特にZIG/SGR4及びSGR3は、prevacuolar compartment(PVC)や液胞への(ポストゴルジ)小胞輸送に関わるSNAREである、AtVTI11及びAtVAM3をコードしていた。ZIG/AtVTI11はSGR3/AtVAM3と結合することが知られている。sgr3では、AtVAM3のSNAREモチーフの近傍にアミノ酸置換変異が起きていた。SGR3変異蛋白質では、ZIG/AtVTI11との結合能が低下していることが判った。一方、zig-3ではSNAREモチーフ中の高度に保存されたアミノ酸が置換されており、この場合もSNARE間の相互作用の低下が予想される。 またzig-1は重力屈性異常に加えて、花茎が節で折れ曲がり、ジクザクに伸長するという表現型を示す。zig-1において、重力感受細胞である内皮細胞でのみZIGを発現させると、重力屈性はほぼ完全に相補された。それに対し非常に興味深いことに、花茎の形態異常は相補されなかった。このことはZIGが組織特異的な機能を持つことを示唆している。これに着目し、現在zig-1のそれぞれの表現型を独立にもしくは同時に抑制することのできるサプレッサー変異体の単離・解析を進めている。既にzig-1のすべての表現型を抑制しうる優性のサプレッサー変異の原因遺伝子(ZIGZAG SUPPRESSOR 1:ZIP1)を同定しつつある。
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