研究概要 |
ケツルアズキ発芽子葉細胞においてde novo合成されるシステイン・プロテイナーゼ(SH-EP)は不活性な前駆体として小胞体先端部に集積し、プロテイナーゼ小胞により液胞に輸送される。このプロテイナーゼ小胞の形成機構の解明を目的として、SH-EPの全長およびC末端KDEL配列を欠失させたSH-EP(KDEL-)をシロイヌナズナで発現させた。SH-EP(KDEL+)を発現させたシロイヌナズナを免疫組織化学的手法により観察したところ、プロテイナーゼ小胞と同様の直径100-500nmの小胞にSH-EP(KDEL+)は高度に集積していた。一方、SH-EP(KDEL-)は細胞外に分泌され、細胞間隙の一部に集積していた。SH-EP(KDEL-)を発現するシロイヌナズナは種子(T1)発芽後、本葉を2-4枚出すまでは成長したが、その後枯死した。そこで活性中心アミノ酸のシステインをグリシンに置換したSH-EP(C152G, KDEL-)を発現する形質転換体を作成したところ、その植物体は正常に生育した。以上のことから、プロテイナーゼ小胞の形成にはC末端KDEL配列が必須であること、および、KDEL配列が液胞輸送シグナルとして機能している可能性が示された。また、細胞外に分泌されたSH-EP(KDEL-)により細胞壁の外側または細胞間隙に局在しているタンパク質が分解されたため植物体が枯死したことが推定された。プロテイナーゼ小胞を可視化するために、シグナルペプチド(SP)-GFP-SHEPおよびSP-DsRED-SHEPをそれぞれタバコ培養細胞で発現させたところ、プロテイナーゼ小胞に相当するスポット状のシグナルが観察され、さらに細胞分裂期には両融合タンパク質は小胞体と同様の細胞内分布を示した。これらは、プロテイナーゼ小胞が小胞体由来であることを支持した。
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