研究概要 |
本研究では、シロイヌナズナをモデル植物として、Affymetrix社のマイクロアレイを用いてオーキシンにより早期に応答し、発現が影響を受ける因子を網羅的に解析した。その結果HAT2遺伝子発現が顕著なオーキシン誘導性を示した。HAT2過剰発現株の解析からHAT2遺伝子は地上部ではオーキシンシグナルを正に制御し、地下部では負に制御することを示唆した。さらに、オーキシンによるHAT2遺伝子発現誘導はユビキチンリガーゼE3の突然変異体であるtir1により抑制された。このことはHAT2がユプロテオソームによるタンパク質レベルでの制御を受けていることを示唆している。また、HAT2の過剰発現体では内生のHAT2遺伝子発現が抑制されていた。逆に、HAT2のDNA結合ドメイン,転写活性化ドメインVP16,及び誘導系GRドメインを用いたHAT2タンパク質の下流因子の発現誘導系を用いた解析ではHAT2自身の発現が誘導された。さらにHAT2の発現はタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドによっても顕著に誘導された。これらのことから、HAT2タンパク質は負の転写調節因子として機能し、プロテオソームによるタンパク質の安定性に関する制御を受け、自己の遺伝子発現を制御していることが示唆された。今後はこのHAT2遺伝子の分子遺伝学的、生化学的解析を進めこのモデルを検証することがオーキシンの作用機構の解明につながると考えている。
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