1、ヒメツリガネゴケ完全長cDNAライブラリー作成と塩基配列情報のデータベース化 既存の無処理、オーキシン処理に加え、サイトカイニン処理した原糸体由来の完全長ライブラリーを作成した。この3種類から合計4万のcDNAクローンの塩基配列を両末端から決定し、そのほとんどを一般公開した。これらのデータと既公開のものをあわせた統合ヒメツリガネゴケデータベースを構築した。 2、サイトカイニン応答異常変異体の単離 (1)スクリーニングの効率を高めるため、完全長cDNAをヒメツリガネゴケの単離プロトプラストに導入し一過的に過剰発現させ、サイトカイニン応答が異常になる変異体を同定できる系を構築した。また、このための一過的過剰発現用ベクターを新たに作成した。 (2)異なるサイトカイニン、オーキシン濃度を組み合わせた培地におけるヒメツリガネゴケの単離プロトプラストの再生過程を調べた。サイトカイニン濃度が高くなるにつれて、再生5細胞目から多数の頂端細胞からなると思われる細胞塊が誘導された。この基礎データは、過剰発現変異体をスクリーニングする際の1つの指標として用いた。 (3)サイトカイニンとオーキシン添加再生培地下でも正常な形態の原糸体を再生させたものやホルモン無添加再生培地において側枝頂端細胞の形態が異常になったもの、さらには通常オーキシン添加時でのみ見られるカウロネマ細胞が無添加培地において分化してきたものなど、過剰発現によりサイトカイニンやオーキシンに対する応答性に影響を与えた遺伝子を10種類同定することができた。これらのクローンを基にしたより詳細な解析を行っていくことで、サイトカイニンの作用機構に関する制御系の一端が明らかになると考える。
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