研究概要 |
高等植物における小胞輸送制御機構の多様性と,その制御機構の理解を目的とし,平成12年度では,シロイヌナズナより既に単離していた高等植物に特異的なRab/Ypt GTPaseであるAra6の解析を行った.その結果,Ara6がこれまでに知られていたRab/Ypt GTPaseとは全く異なった脂質修飾,即ちミリストイル化とパルミトイル化を介して膜に結合していること,その発現が植物体,培養細胞双方において恒常的であることを明らかにした.さらに,緑色蛍光タンパク質と融合させたAra6を用いた解析により,Ara6は,細胞外から細胞内への物質の輸送系であるエンドサイトーシス経路を担うオルガネラ,エンドソームに局在していることを突き止めた.Ara6のエンドサイトーシスにおける調節的役割は,活性型のAra6を植物細胞内で発現させた際にエンドソームの融合が促進されるという結果からも支持された.これらのことより,Ara6の機能解析により得られる知見は,植物におけるエンドサイトーシス制御の機構解明の突破口となると期待している. さらに,Ara6のエンドソームへの局在化機構に関しても詳細な解析を行った.その結果,Ara6の正確な局在には,ヌクレオチドの結合,アミノ末端の正確な脂質修飾,カルボキシル末端のアミノ酸配列が,協調的に機能することが必須であることを明らかにした.これらの知見は,これまでに広く知られている一般的なRab/Ypt GTPaseの局在化機構とは異なっており,植物に特異的なものであると考えられる. 以上の結果を発表すべく,現在論文投稿の準備を行っている.
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