研究概要 |
1.大腸菌のMinE蛋白質は細胞分裂面決定因子の一つとして知られる.minE相同遺伝子は一部藻類の葉緑体ゲノムにも存在し,葉緑体分裂に関与していると考えられているが,高等植物では葉緑体ゲノムに見つからないことから核ゲノムに転移していると推測された.今年度の研究において,シロイヌナズナの核コードminE,AtMinE1を同定した.AtMinE1は細菌及び藻類葉緑体コードのMinEに対してN,C両末端に数十残基の延長部を持ち,GFPアッセイの結果N末端は葉緑体移行シグナルとして働くことが明かとなった.CaMV35Sプロモーター下でAtMinE1を過剰発現する形質転換植物を作出し,その細胞内構造を観察したところ,ミトコンドリア形態は野生型と同様であるのに対し,葉緑体数・形態に顕著な異常が観察された.以上の結果からMinEが葉緑体分裂制御因子であることが証明された. 2.シロイヌナズナの葉緑体分裂因子FtsZ1-1と相互作用する新規葉緑体蛋白質の同定を酵母ツーハイブリッド法により試みた.単離された陽性クローンHA01は714アミノ酸からなる高等植物特有の新規蛋白質をコードしていた.しかしながら,GFPアッセイの結果,HAθ1は核蛋白質であることが判明し,目的の相互作用因子は得られなかった. 3.葉緑体移行シグナル様のN末端ペプチドを持ったキネシン様蛋白質3種(KIC1,2,3)のcDNA全長を単離した.N末端:GFPを用いた観察の結果,KIC1,3の二種は葉緑体ではなくミトコンドリア内に移行する蛋白質である可能性が高いことが判明した.現在までにミトコンドリア内部に移行するキネシン様蛋白質は全生物を通じて知られていない.そこで両蛋白質の細胞内局在及び細胞機能を確定するため,特異抗体作製及びアンチセンス形質転換体の作出を行った.
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