研究概要 |
リアルタイム蛍光観察による精細胞の動態解析 本年度は、1)SYTOX Green染色による受精時における動態解析と、2)GFP形質転換体の作製を目標に研究を行った。 前者ではまず、精細胞による受精の開始点である花粉管による精細胞放出の瞬間を捉えることに成功し(Higashiyama et al.,2000)、さらに高頻度に観察できるよう、そのタイミングについて解析をおこなった。さらにSYTOX Green染色および冷却CCDカメラを用いたリアルタイム観察の条件検討を行い、花粉管内部での精細胞の挙動を容易に観察できるようになった。研究を進める中で、雌性生殖細胞などからなる胚嚢が青色励起光によってダメージを受けやすいことが明らかとなってきた。そこで現在、励起光を精細胞がある付近だけに照射するなどの改良を引き続き行い、胚嚢内部での精細胞の挙動を明らかにすることを目指している。 後者では、本年度の設備備品として導入した人工気象器(日本医化機器製作所製LPH-200)により、材料の安定した維持と組織培養が可能になった。さらにGFPやアグロバクテリウムを入手して形質転換を開始した。これまでに報告されているリーフディスク培養による形質転換に加え、in plantaでの生殖細胞への形質転換法の開発を試みており、引き続き解析を進めたい。 2つの精細胞における受精の特異性の解析 卵細胞および中央細胞との受精の特異性を解析するために、まずこれらの雌性生殖細胞を単離した。トレニアは胚嚢が裸出するために雌性生殖細胞のプロトプラストを得ることが容易で、10分間に120セットもの胚嚢プロトプラストを得ることが可能であった。現在雄の花粉管から精細胞を得る条件を検討しており、特に受精能を獲得した花粉管から精細胞を単離することを試みている。花粉管の先端にUVレーザーを照射して花粉管を破裂させ、SYTOX Green染色した精細胞を蛍光観察下で光ピンセットにより単離している。さらに現在、胚嚢プロトプラストと精細胞を共培養する条件、光ピンセットによる受精の条件などを検討している。
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