本年度は実験計画書に即し、上記テーマを遂行するための基礎実験を中心に研究を行った。まず、実験材料となるアフリカツメガエルの2種類の培養細胞の入手を行い、培養条件の確立を行った。また、アフリカツメガエル幼生および成体の肝臓を用いた初代細胞の培養系の確立を行うため、酵素処理の時間・濃度、血清濃度などの最適条件を設定することができた。現在、この系を用いることにより、甲状腺ホルモン処理による幼生細胞へのアポトーシス誘導を試みているところであり、アクリジンオレンジ染色により、核の凝縮の確認ができている。今後はTUNEL法等を用いて、変態における成体細胞の出現が、幼生細胞の排除によるものか、それとも幼生細胞からの分化によるものかを調べる予定である。また、変態において非常に重要な役割を果たすステロイドホルモンや甲状腺ホルモン(TRβ)などの核内受容体について、変態後の細胞内分解機構の解明を目指し、種々の実験を試みている。まず、変態において最も重要であり、変態に関連する遺伝子の転写制御を行っているTRβの動態を解析するため、TRβの組換え体タンパク質と抗TRβ抗体を作製中である。また、変態において甲状腺ホルモンのもつ作用を増強し、変態を加速する役割をもつグルココルチコイド(GC)の作用も検討したところ、培養細胞において、GCを投与することにより、GC受容体(GR)の遺伝子発現量は低下することを見出し、変態促進作用におけるGCの主たる役割は、GR量の増加ではない可能性を強く示唆する結果を得ている。さらにこの結果は、変態において核内受容体タンパク質の量的調節が重要であることを裏付けるものであると考えられる。
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