研究概要 |
植物の液胞は細胞体積の90%以上を占め,代謝産物の貯蔵や区画化に機能し,植物組織の力学的強度の維持の一端を担うオルガネラである.液胞の水チャネルγ-TIP(tonoplast intrinsic proten)と緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を発現する形質転換シロイヌナズナを用い,植物個体での液胞の動態の観察を行った.高速スキャンの可能な共焦点レーザー顕微鏡を用いることにより,リアルタイムで標識分子の動態を観察することができた.複数の形質転換植物のラインで,子葉,胚軸,根端以外の根の領域において,液胞膜が主に標識されることを確認し,そのダイナミックな挙動を共焦点像のビデオ映像として捉えた.しばしば液胞内には大きな陥入が生じて,球状やチューブ状の構造が生じているのが観察された.そのうち球状の構造(bulbs)は,直径が1-5mで,発達過程の子葉や伸長中の胚軸において多く観察され,外側の液胞膜よりも強い蛍光を発していた.Z軸方向に焦点面を変えて観察すると,ほとんど全てのbulbsは外側の液胞膜とどこかで連続していた.非形質転換体でも同様の構造が観察されることを確認するため,またbulbsのトポロジーを微細構造レベルで明らかにするために,野生型の子葉を液体ヘリウムを用いた金属圧着型の急速凍結により固定し電子顕微鏡観察した.表皮細胞において良好な像が得られ,bulbsと考えられる液胞内の構造が観察された.連続切片像からの立体構築により,bulbsは時に2枚の液胞膜に挟まれた細胞質が液胞内に陥入しているような複雑な構造を取り,非常に狭い領域で外側の液胞膜と連続していることが明らかになった.
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