研究概要 |
海水中からバナジウムイオンを高濃度かつ高選択的に濃縮するホヤは、金属イオンの濃縮機構を解析するための格好のモデル動物である。これまでに1)濃縮の担い手が約10種類の血球の中のバナジウム濃縮細胞(バナドサイト)であること。2)この細胞のもつ特異な能力は、細胞質に存在するバナジウム結合タンパク質、ペントースリン酸経路の酵素群、硫酸酸性の液胞膜上の液胞型H-ATPaseなどの素要素が効率よく連携することにより発揮されていることが判明している。バナドサイトにおけるバナジウムの濃縮機構を解明する上で、残された重要な素要素は、細胞内や液胞内へ直接バナジウムイオンを輸送する金属輸送体を明らかにすることである。 本研究では、ホヤのバナドサイトにおいて細胞内や液胞内へ直接バナジウムイオンを輸送する金属輸送体を同定するため、既知の金属輸送体の中からバナドサイトに局在する金属輸送体を探索し、これを哺乳類細胞に発現させてバナジウム濃縮能をもつ培養細胞を作製することを計画した。 本研究による成果は以下の通り。 1.スジキレポヤの血球cDNAライブラリーから金属輸送体のNramp, metal-ATPaseを単離し、全長のcDNA配列を明らかにした。 2.Nrampの細胞外の糖鎖修飾領域、細胞内の金属輸送に必須な領域をコードするcDNA領域を、マルトース結合タンパク質発現ベクターに導入し、融合タンパク質を合成した。 3.ホヤのNrampのタンパク質コード領域を合成し、GFP発現ベクターに組み込んだ。 4.上記のNramp-GFP融合タンパク質発現ベクターをCHO-K1細胞に導入し、培養細胞内でホヤのNrampを発現させた。 5.ホヤのNrampを発現させたCHO-K1細胞をパナジウムを含む培地でインキュベートしたところ、コントロールの細胞の2〜4倍のバナジウムを取り込むことを見いだした。
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