平成12年度は、C.merolaeのcDNAライブラリーを作製し、この中に含まれる遺伝子の塩基配列を決定した。C.merolaeの培養は、申請者らが確立した方法(Ohta et al.1992)を改変した方法で行った。Allen培地に10%CO_2を通気し、16時間明期、8時間暗期の周期で7日間培養を行い、対数増殖期の細胞を採集した。細胞からのmRNAは、Qiagen社のPlant RNA extraction Kitを用いて200bp以上の長さのものだけを調製し、さらに、Pharmacia社のポリA-mRNA抽出カラムを2度通すことにより、95%以上のポリ-Aテールを持つRNAを得ることができた。このポリ-Aテールを持つRNAに対し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。このcDNAに、リンカーDNA、アダプターDNAを付加し、ファージミドベクターであるλZAPIIに挿入し、E.coli XL-1 Blue MRF株を宿主としてクローン化を行った。 次に、クローン化した挿入断片の塩基配列を決定した。得られたプラスミドDNAをダイターミネーター法でラベルし、ABI社のDNAシークエンサー377を用いて、サンガー法で塩基配列を決定した。挿入断片の5′側および3′側の両側から塩基配列の決定を行い、得られた断片が細胞核からのmRNA由来であることを確認した。平成12年度中に300個、600シークエンスの塩基配列を決定したところ、255のnon-redundantの塩基配列が得られた。得られたcDNAの平均長は1.6kbpであった。相同性検索の結果、58%のクローンがC.merolaeに特有のものであった。また、Arabidopsisと相同性の高い未知の配列も約15%含まれていた。光合成関連の遺伝子は、ほとんどのものがラン藻と高い相同性を示し、植物の光合成の起源は、原真核生物に寄生した共生体の藍藻であることがわかった。
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