(1)ニハイチュウの分類 8種の頭足類(アオリイカ、ヒメコウイカ、シリヤケイカ、スナダコ、ワモンダコ、シマダコ、マメダコ、ヒメイカ)の腎臓を調べ、寄生するニハイチュウを検索した。その結果、アオリイカ、ヒメコウイカ、シリヤケイカ、スナダコからそれぞれ1種、計4新種のニハイチュウを発見した。しかし、他の頭足類にはニハイチュウが見られなかった。一般に底棲の頭足類にはニハイチュウが見られるが、珊瑚礁に生息する頭足類や小型の頭足類にはニハイチュウが見いだせなかった。 (2)蠕虫型幼生の基本的発生様式と発生様式からみた系統関係 4属6種のニハイチュウの蠕虫型幼生について、非配偶子から蠕虫型幼生にいたる発生過程と細胞系譜を系統的に調べ、蠕虫型幼生の発生にみられる種間の相違と種間に共通する特徴を明らかにした。蠕虫型幼生の体皮細胞数は種によって違いそれが分類の指標となっているが、それは細胞系譜の末端部分の分裂回数の違いによっていた。将来幼生の体内部を形成する細胞系列では、おおよそ体皮細胞の数に比例した数の予定細胞死が生じた。また初期の発生過程において、第1分裂で将来幼生の前部体皮細胞を形成する母細胞が分離すること、第2分裂で将来幼生の後部体皮細胞を形成する母細胞と幼生の体内部を形成する母細胞が分離することなど、種間で共通する発生様式がみられた。種間に共通する特徴は発生初期から中期に、種間の違いは発生後期に現れた。蠕虫型幼生の発生過程の大部分は種間で保存されていた。また、決定した6種のニハイチュウの蠕虫型幼生の細胞系譜をもとに、系統樹を作成し細胞系譜による類縁関係を調べた。その結果、形態的に大きく異なる2つのグループ(Conocyemidae科とDicyemidae科)が細胞系譜からみても関係が薄く、類似した形態をもつ種は1つのグループを形成し関係が示唆された。
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