イギス目イギス科の3種(フタツガサネ、アミクサ、ハネイギス)を用いて、果胞子体に付随する配偶体の大きさと果胞子体の生産能との間の相関関係について調査した。胞子の放出回数は必ずしも付随する配偶体の長さと比例せず、多くの果胞子体は一ヶ月の実験期間の間に胞子を断続的に放出した。放出される胞子のサイズと数を比較したところ、付随する配偶体の全長が長い場合は比較的一定していたが、フタツガサネでは配偶体が1mm以下の長さになると急激に減少し、アミクサおよびハネイギスでは4mm以下から徐々に減少し始めた。配偶体を完全に除去した果胞子体から放出された胞子は、サイズ・数ともに最も高い減少率を示し、胞子の放出は1度しか起こらなかった。ハネイギスの3つの培養株(室蘭、下田、香住産)で上記の実験を試みたところ、同様の結果が得られた。胞子の放出1日前に配偶体から果胞子体を切り離しても、胞子のサイズおよび放出数の減少がみられた。同じ培養株から放出された大きさの異なる胞子を培養し、胞子の成長速度を比較したところ、大きな胞子の方が明らかに速い成長率を示した。 以上の結果から、果胞子体はある一定の長さ以上の配偶体と連結していなければ正常な大きさ・数の果胞子を形成出来ないこと、また配偶体から果胞子体への代謝産物の供給は胞子の放出直前まで行われていることが示唆された。フタツガサネは他の2種と比べて配偶体除去の反応が鈍かったが、これはフタツガサネの果胞子体の生産能の低さと関係しているかもしれない。果胞子体の生産能や発達過程は紅藻でかなり異なることから、紅藻全体でみると果胞子体の配偶体への依存度はかなり多様化していることが推察される。
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