平成12年度は、三ヶ日人骨3点(頭骨、大腿骨、寛骨)について、放射性炭素年代測定を行った。うち頭骨および大腿骨については、どちらも縄文時代早期という結果を得、発見当初から考えられていたように更新世の時代にさかのぼるものではないことが明らかになった。あと1点の寛骨についてはコラーゲンの残存量が非常に少なく、測定に必要な量のコラーゲンを抽出するのが困難なため、残存率の低い場合の抽出法の再検討を行い、現在、再抽出が進行中である。これについては、来年度前半に測定を完了する予定である。 このほか、聖嶽洞穴遺跡出土の獣骨および人骨についても、フッ素分析および放射性炭素年代測定を行った。聖嶽洞穴遺跡では、1962年の調査により、旧石器時代の遺物が確認されており、同調査によって出土した人骨が、これと同時代のものであるか否かの再検討が要されていた。これを請け、1999年に再調査が行われ、新たに多数の人骨および若干の獣骨を得た。本研究では、再調査によって出土した人骨資料を中心とした年代分析を行った。その結果は次のようにまとめられる。(1)第I層および第III層に含まれる人骨のほとんどは中世以降に比定され、第I層の年代観は従来通り支持されるが、第III層が画然と古いという従来の年代観は支持されない。(2)聖嶽洞穴遺跡出土骨は全体として中世以降を主体とするが、より古い、縄文時代早期に至るようなものも若干存在する。ただし、旧石器時代にまで遡るかは疑問であり、またそれらの産出層位についても確認されていない。 聖嶽洞穴遺跡については、今後、従来の人骨資料についても年代の再確認が必要であると考えられる。
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