本年度は、磁場中示唆熱分析の作製とそれによる評価を最高14Tの磁場まで行った。今年度最初に、昨年度から制作中であった示唆熱分析ユニットが完成し、すでにある磁場中熱処理炉と組み合わせた実験を行った。平行して、熱処理炉の作製も今年度行っている。これまでに得られている実験結果から現在のところ以下のようなことがわかってきつつある。YBCOの部分溶融温度は磁場の印加によって変化しないが結晶化温度は磁場の印加とともに減少することがわかった。この結果は、磁場中の熱処理を行う上で非常に重要な結果である。このことから、熱力学的な結晶融解現象に関しては磁場の効果は無視できるが、そこから結晶成長する場合には結晶成長機構そのものに磁場が影響していることが示唆される。さらに核生成の結晶成長への効果を押さえるためにMgO粉末を加えた場合でも、磁場による結晶化温度の減少は同じであることから、磁場の印加によって結晶成長速度が減少していると結論づけられた。これらはYBCOの結晶成長に必要なYの拡散過程に磁場が影響を及ぼしているためと考えられる。これらの結果をさらに調べるために、組織観察などの実験や再現性の実験などが現在進行中である。来年度は、本格的に本装置を用いた実験を行う予定であるが、すでに得られた結果に関しては、国際会議にて発表を行い論文もJournal of Crystal Growthに受理されまもなく掲載予定である。
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