本奨励研究の成果としては、以下の2点が主に挙げられる。 1.流通式超臨界晶析装置により、フタロシアニナトオキソチタニウム(IV)(TiOPc)の微結晶を試みた結果、用いる溶媒種や温度により結晶構造や微結晶サイズの制御が可能であることが先ず確認された。残念ながら、光伝導性が最も高いとされるY型TiOPc微結晶の作製は達成できなかったが、A型TiOPc微結晶は超臨界晶析法により量産的に作製可能なことが示唆された。作製されたA型TiOPc微結晶の電子写真特性が詳細に検討された結果、実用化にかなり近い性能値を示すことが明らかになった。今後、濃硫酸不使用の本手法でも、A型TiOPc微結晶の量産化やY型TiOPc微結晶の作製が可能であることを明示し、実用化レベルの電子写真特性を有する材料の提供を目指す。 2.超臨界晶析法をC_<60>のような難溶性π共役系有機化合物の微結晶化にも応用した結果、約40nmという微小サイズのC_<60>微結晶の分散液を作製可能であり、その光学特性はバルク結晶のものとは異なり、微結晶特有のサイズ依存性を示すことが判明した。今後、C_<60>微結晶の詳細な光学特性を行うとともに、EL特性や色素顔料として注目される難溶性π共役系有機化合物系(キナクリドンなど)にも拡張する予定である。 以上の様に、超臨界流体を用いて、難溶性有機化合物の微結晶を作製する方法を確立し、その有用性を示すという本奨励研究の目的は十分に達成できたと考える。
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