偏光発光可能な電界発光素子とその偏光面の制御の検討を行うため、モデル化合物として、ジアルキルタ-チオフェン誘導体を選んだ。第一段階として、ジアルキルタ-チオフェン誘導体の電荷輸送特性をTime-of-flightにより評価したところ、ホール、電子共にSmC、SmF、SmG相でそれぞれ、10^<-4>、10^<-3>、10^<-2> cm^2/Vsのオーダーの移動度を示した。これらの値は、従来のアモルファス有機半導体の値に比べ、2桁から4桁高い値であり、この材料が優れた電荷輸送特性を示す有機半導体である事が明らかとなった。また、従来、ホールしか動けないと考えられていたオリゴチオフェン誘導体ではじめて電子の輸送を観測しており、有機半導体として注目されているオリゴチオフェン誘導体の新しい可能性を明らかにする事ができた。 一方、偏光発光の偏光面の制御を狙い、強誘電性を持つ液晶性半導体の設計、合成を行った。ジアルキルタ-チオフェンのアルキル鎖に不斉炭素を導入した2-(2-(S)-メチルブチル)-5"-ドデシルタ-チオフェンは強誘電相であるSmC^*相を示し、この相で2nC/m^2の自発分極を示し、電場を反転させる事により、分子の配向方向を変調する事ができた。また、この相において、この材料は良好な両極性の電荷輸送を示し、ホールと電子の移動度は共に10^<-4>cm^2/Vsであった。良好な両極性の電荷輸送能は、この材料が単層型の電荷発光素子に応用可能である事を示しており、この材料の強誘電性を利用した偏光面の制御が可能である事を示唆している。今後、この材料を用いた電界発光素子の作成を検討する予定である。
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