今年度の研究実績は以下のとおりである。 分子線エピタキシー法によりGaAs基板上にZnSeO混晶の成長を行った。O原料として、高周波(RF)プラズマにより活性化されたO原子を用いた。GaAs基板上に直接ZnSeOを成長すると、GaAs基板表面が酸化し、その後の成長層が非晶質になることがわかった。そこでGaAs基板上に一旦ZnSe緩衝層を成長した後、プラズマによって活性化されたO原子を供給すると成長層は単結晶となることがわかった。また、成長層の結晶性は基板温度に大きく影響を受け、300度以下では非晶質、400度以上では単結晶となることがわかった。しかし、ZnSeO混晶のO組成は均一ではなく、ZnSeリッチな領域とZnOリッチな領域が相分離した状態になっていることが電子線回折の結果から明らかになり、いわゆるミッシビリティギャップが存在することがわかった。これまで報告されているZnOはウルツ鉱構造であるが、本研究で得られたZnOリッチな領域は閃亜鉛鉱構造であった。これは、基板であるGaAsが閃亜鉛鉱構造をとるためであり、ZnSeO混晶においてO組成が小さい場合はZnSeOの結晶構造が閃亜鉛鉱構造になることを示唆している。 成長したZnSeO混晶の発光特性を調べた結果、ZnSeのバンド端よりも低エネルギーにおいても発光を示した。また反射測定においてもZnSeOの吸収端がZnSeのバンド端よりも低エネルギーになっていることがわかった。このことからZnSeにOを導入することによって成長したZnSeO混晶では、ボーイングによってバンドギャップが減少することを明らかにした。 実験と並行してtight-bindingモデルを用いたバンド計算を行った結果、ZnSeO混晶ではボーイングパラメータは4〜5eV程度であることがわかった。 来年度は、引き続きZnSeO混晶成長条件の最適化と、ZnSeO/ZnSe量子構造の作製を行う予定である。
|