研究概要 |
極薄Si基板作製の前に、Si基板上にGaN系発光デバイスの作製を試み、デバイスエピ膜の特性及びデバイス特性を調べた。基板として抵抗率0.02ΩcmのSi(111)を用いた。結晶成長には常圧有機金属気相成長装置(MOCVD)装置により行った。まず、水素雰囲気中1100℃で基板のサーマルクリーニングを行った。次いで同温度でSiドープAlN(120nm)、1080℃でSiドープAlGaN(AlNモル分率27%,380nm)を成長し中間層とした。このAlGaN/AlN中間層上に1080℃でSiドープGaN(400nm)を成長した。温度を770℃に下げ、Ga_<0.87>In_<0.13>N(3nm)/Ga_<0.99>In_<0.01>N(5nm)三重量子井戸(3QW,)、MgドープA_<10.15>Ga_<0.85>N(20nm)を成長した。再び1080℃に昇温後、MgドープGaN(0.2μm)を成長した。成長後の表面にはクラックとメルトバックエッチングに起因した多結晶が若干観察された。成長したウェハーは、反応性イオンエッチングにより、部分的にSiドープGaN層が露出するまでエッチングした。露出させたSiドープGaN層とSi基板上にn電極(それぞれn電極(1)、n電極(2))、MgドープGaN層上にp電極を形成し発光ダイオード(LED)とした。AlGaN/AlN中間層を用いてSi基板上に成長した同条件の三重量子井戸のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定したところ、ピーク波長430nm、半値幅18nmの青色発光が観察された。半値幅が狭いことから、Si基板上でも高品質の量子井戸構造が成長できたことを示している。LEDのエレクトロルミネッセンススペクトルも同様のピーク位置であったことから、電流注入時においても量子井戸から発光させることができたものといえる。LEDのp電極とn電極(1)間、p電極とn電極(2)間の電流-電圧(I-V)特性より直列抵抗を導出したところ、それぞれ200Ω、1kΩであった。p電極とn電極(2)間の直列抵抗が高くなった要因として(1)AlGaN/AlN中間層の抵抗が高い、(2)各層間のバンド不連続性に起因した抵抗が高い、と考えられる。LEDの電流-光出力を測定したところ、p電極とn電極(1)間に電流を流した方がp電極とn電極(2)間より光出力が高くなった。これは、p電極とn電極(1)間の方がジュール熱の影響が少なかったためであると考えられる。
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