研究概要 |
応力低減を目的としたSi基板の極薄化が困難であったため、中間層のAl組成の検討により応力低減を試みた。 基板として抵抗率0.02Ωcmの2インチSi(111)を用いた。結晶成長は有機金属気相成長(MOCVD)装置により行った。1100℃でAlN(120nm)、1080℃でAlGaNを成長し中間層とした。中間層の検討としては、AlGaNの膜厚を固定(380μm)しAlモル分率を0.1〜0.3まで変化させる実験を行った。中間層には高濃度Siドーピング(10^<19>〜10^<20>cm^<-3>)を行った。最後に1080℃でGaN(200nm,Si濃度:〜10^<18>cm^<-3>)を成長した。エピ層に応力が発生すると、この応力を緩和させるように基板には反り(エピ面を上として凹)が生ずる。この反りを数値化するため、エピ基板の上面から半導体レーザーを用いた距離計により、中心部及び周辺部の距離差を測定した。 結晶成長した試料については、AlGaNのAlNモル分率を0.1から0.53と大きくなるに従い、GaN(0004)面のX線ロッキングカーブ半値幅は1660arcsecから1770arcsecと広くなった。しかしながら、エピ基板の中心部及び周辺部の距離差は、AlNモル分率0.1のとき56.2μmであったものがAlNモル分率0.53では39.0μmとなり、AlNモル分率の増加と共に減少し、さらにクラックも減少することがわかった。これは、AlNモル分率の増加に伴いAlGaN層のモザイシティが大きくなり、応力が生じにくくなったもの推測している。AlNモル分率をさらに細かく調整することにより、エピ基板の中心部及び周辺部の距離差が7.0μmまで低減した。 このような応力低減手法を用いて、GaInN多重量子井戸(MQW)青色発光ダイオード(LED)構造を成長し、さらにLEDを作製した。LED構造自体は前年度の構造と同一であるが、MQW構造の最適化を行っている。成長したウェハー表面には中間層に高濃度ドーピングを行ったにもかかわらず、クラックは一切観察されなかった。順方向の直列抵抗値および20mA時の駆動電圧はそれぞれ53Ωおよび4.4Vと低く、昨年度の値(それぞれ1kΩおよび約9V)と比べて大幅な低減を達成することができた。また、青色だけでなく緑色発光も達成できた。
|