ジフェニルメタノフラーレンを合成し、アルミナ充填カラムを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって単離・精製を行ったところ、このカラム内にサブミリオーダーの大きさのメタノフラーレンの単結晶が大量に析出していることがわかった。このカラム内での結晶化の条件を厳密に管理すれば、より大きなメタノフラーレンの単結晶の作成が可能であると思われる。このカラム内で得られたジフェニルメタノフラーレン単結晶を用いて、^<13>C-CP-MAS固体高分解能NMRスペクトルを測定した。一般に使用される直径7mmのローターを用いて回転数4000rpmで測定したNMRスペクトルは、スピニングサイドバンドの影響が大きくスペクトルの帰属が困難であったが、直径4mmのローターを用いて回転数11000rpmで測定したNMRスペクトルではこのスピンニングサイドバンドが分離され、フラーレン核の炭素原子とフェニル環の炭素原子の帰属が可能となった。またこれらのピークのケミカルシフト値から、フラーレン核を構成するπ電子とフェニル環のπ電子との相互作用が示唆された。 フラーレンやメタノフラーレンをフォトニクス材料に応用する手段として、これらの分子にポリマー鎖を導入する方法を試みた。フラーレンのアルキル付加体を重合開始剤としてビニルモノマーを重合する方法とポリマーの末端を再活性化してフラーレンに付加させる方法の二種類の方法によって、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルカルバゾール、ポリデヒドロアラニンの4種類のポリマーにフラーレンを導入することができた。ポリビニルカルバゾールにフラーレンを付加した系では、フォトリフラクティブ特性を測定した。また水溶性ポリマーであるポリデヒドロアラニンに付加させた系では、極性溶媒中で会合体の形成が確認された。
|