長波長帯半導体レーザー素子へ量子ドット構造を適応すべく計画した本研究は、以下の2点がキーポイントとなっている。それぞれについて、本年度の成果をまとめる。 (1)GaAs系III-V族化合物半導体へのアンチサーファクタント種の開発 アンチサーファクタントとは2次元成長を行うヘテロ構造系においても、3次元構造を形成することを可能にする結晶成長その場プロセスにおける新概念である。GaAs系に対しては窒素がその役目を果たし、供給量にて微小構造の制御が可能である。本年は、GaAs表面へのアンチサーファクタント供給量と、その後のGaAs成長初期過程における微小構造の相関を明らかにした。その際、RHEEDによる成長その場観察も行い、アンチサーファクタントが結晶情報を引き継いで吸着し、格子定数変化をもたらさずに、ドット構造が形成される様子を明らかにした。 (2)InGaAsN系混晶 InGaAs系ドットにおけ量子ドットレーザーは既に報告があるが、GaAsとのエネルギー差が少なく、閉じこめ構造には不利であった。InGaAsN系では閉じこめエネルギーは十分取れるが、Nの取り込み増加に伴い格子定数がGaAsに近づきドット構造の形成が困難になった。アンチサーファクタント効果との兼ね合いで、InGaAsN系ドット構造が形成できる成長条件があることがわかった。また、InGaAs系成長において、クリティカルシックネスの延伸効果なども明らかになった。
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