研究概要 |
平成12年度は以下の成果をあげた。試料は所属プロジェクトと東工大 宗片研で分子線エピタキシーを用いて作製された磁性半導体ヘテロ構造である。 1)光照射による保持力減少 強磁性p-In_<0.87>Mn_<0.13>As(30 nm)/GaSb(キュリー温度40K)において、零磁場で半導体レーザー照射により保持力が減少する効果を観測した。これは磁化反転が低磁場で起こり易くなったことを示唆する。光誘起現象は電気伝導測定で検出した。(In,Mn)As/GaSbで特徴的な永続的光伝導が高温で消失してはじめて保持力は暗状態の値に戻る。また照射光強度が増加すると保持力減少量は大きくなる。したがって保持力減少はキャリア誘起効果であり、キャリア濃度変化による磁化反転過程制御の可能性を示した。 2)常磁性半導体の光キャリア誘起磁化 SQUID磁束計を用いて常磁性p-In_<0.87>Mn_<0.13>As(44 nm)/GaSb(低キャリア濃度系)において光誘起磁化の観測に成功した。光誘起磁化変化は微小だが光照射後も残り永続的光伝導を反映するので光キャリア誘起現象である。光生成正孔によりMn間反強磁性相互作用が若干弱くなったと理解できる。照射光波長依存性から、正孔注入効率を上げるためヘテロ界面での内部電場設計の重要性を明らかにした。 3)円偏光励起による磁化の増減 強磁性p-(Ga,Mn,Fe)As(200 nm)(キュリー温度45K)において零磁場で円偏光励起を行うと試料の磁化が円偏光の極性に応じて増減する効果を低温で見出した。この増減は照射後も僅かだが残る。これらは円偏光生成されたスピン偏極キャリアが磁気モーメントを整列させた現象であると考えている。これは磁場を使わない強磁性体の新しい磁化反転法として期待され、現在研究を継続中である。
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