研究概要 |
本研究は,圧電効果によって生じる圧電場を利用し,圧電結晶表面近傍の媒質を調べる顕微鏡の開発である.具体的には,弾性表面波(以下SH-SAW)伝搬に伴って発生する圧電ポテンシャルをプローブとし,伝搬面表面と接する媒質(特に液体)の情報を検出すること目的としている.本年度は,ベクトル電圧計を購入し計測を行う計画であった.しかし,予算的に購入が困難であったため,ディジタルオシロスコープを購入し,計測系の自作を試みた.また,SH-SAWセンサを液体フロー系に接続し,波形応答波形から液体中に含まれるイオン種の推定を試みた.なお,推定には人工ニューラルネットワーク(ANN)を利用した. SAW発振器を信号源(Asinωt)とする.この信号がセンサ部で変化し,Bsin(ωt-α)になったとする.Bとαを検出する方法として,センサ出力に入力信号および位相を90度ずらした信号(Asinωt,Acosωt)を掛ける.ローパスフィルタを利用することにより,0.5ABcos(α)と0.5ABsin(α)が得られる.これらはDC成分なので,AD変換により容易にPCに取りこむことが可能である.位相が90度正確にずれた信号を生成する回路(50MHz帯用)を設計・製作を行っている. 液体フロー系の過渡応答波形からイオン種を推定するため,これまではパターンマッチングを行ってきた.しかし,アルゴリズムが複雑となり自動化に適さない.そこで,ANNを利用した.また,過渡応答波形の立上りと立下り間の時間差を利用することにより,流路長など測定系に依存せずに識別可能となった. センサ表面は平坦な方が好ましい.これは本研究にも当てはまる.もし表面が凹凸ならばどうなるのだろうか.表面に溝を設けたセンサで液体を計測した.その結果,圧電場とともに伝搬するひずみの摂動により,密度と粘度の分離検出が可能であることが判明した.これは新しい物理現象として,物性検出に利用できる.
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