真空蒸着法及び高周波マグネトロンスパッタ法により異なる組成を有する金サマリウム合金薄膜を形成した。真空蒸着においては二つの蒸発源より金、サマリウムをそれぞれ蒸発させた。相互の蒸発量を制御することで薄膜の組成を制御した。また、マグネトロンスパッタ法では、サマリウムターゲット上に金の薄板を設置し、その枚数を変化させることで組成を制御した。基板温度室温で形成した薄膜の結晶性をX線回折により評価したところ、薄膜はいずれもアモルファスであった。合金組成はラザフォード後方散乱法、粒子線励起X線放出測定、光電子分光法を用いて評価した。また、ケルビン法によりそれぞれの薄膜の仕事関数を室温で測定し、組成との関係を調査した。その結果、サマリウムに金が数原子パーセント含まれると仕事関数はサマリウム単体のものから急激に上昇し、その後組成に対する作事関数の上昇はやや緩やかになることが明らかとなった。IBMにより過去に報告された金25原子パーセント〓含む薄膜においても仕事関数は極端に低くはならず、約4eVの値であった。しかしながら、この付近では金の組〓の上昇に伴う仕事関数の上昇はほとんどないか、むしろ若干低下する結果が得られ、このことが大量の金の負イオンを生成した可能性と考えることはできる。組成を制御することで比較的広い範囲で仕事関数を変化させることができたので、今後実際に電子放出特性を調査して仕事関数と安定性の相関について調査する予定である。
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