研究概要 |
研究代表者は強誘電体BaTiO_3あるいは(Ba,Sr)TiO_3の高品質な薄膜をシリコン基板上に作製することを目指している。しかしながら上記の強誘電体はシリコンとの界面でアルカリ土類金属とシリコンの化合物(シリサイド)を形成し強誘電体薄膜の特性の劣化を招くことが知られている。そこで実際に薄膜の作製を行なう前に、界面反応についての基礎的な情報を得て制御法を確立することを目的として研究を行なっている。平成12年度は、先ず、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いてSi(100)表面でのBaの吸着構造に関する研究を行なった。Ba吸着量と基板温度の関係によりBa/Si(100)系は様々な表面超構造をとることが電子回折法により知られていたが、STMを用いた実空間での観察報告がほとんど無く吸着構造については分かっていなかった。当研究ではこれまで電子回折法で観察されている全ての表面構造をSTMで観察することに成功した。現在、Surface Scienceに2×3及びc(2×6)構造に関する論文を、Physical Review Bに1×2構造に関する論文を投稿中である。次にシリコン基板の水素終端化による界面反応制御に関する研究を行なった。Si基板は水素終端により不動態化し、金属-Si界面反応が抑制されることが知られている。そこでSTMを用いて、水素終端化Si(100)表面でのBaの吸着構造の変化について研究した。清浄Si(100)表面ではBaは2次元的な吸着構造をとるのに対し水素終端面ではクラスター化すること、さらに清浄表面上ではBaは1次元方向にのみ移動するのに対し水素終端面上では2次元方向に移動することがわかった。当研究の成果はJapanese Journal of Applied Physicsに投稿中である。
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