研究概要 |
本年度は、パルスエバネッセント場を利用した相互作用測定システムの試作及びその性能の評価を行った。倒立顕微鏡に全反射プリズムをセットし、QスイッチNd:YAGレーザーの第2高調波(パルス幅30ns,繰り返し周波数10kHz)を入射して、照明用のパルスエバネッセント場をプリズム・溶液界面に発生させた。また、Nd:YAGレーザーの基本波を倒立顕微鏡の対物レンズにより試料溶液中に集光し、測定対象となる微粒子をパルスエバネッセント場の存在するプリズム・溶液界面付近で弱く保持した。さらに、パルスエバネッセント場の微粒子による散乱光を4分割フォトダイオードで検出し、パルスレーザーに同期させたA/D変換ボードを介して微粒子の位置をナノメートルオーダーの精度で観測するシステムを開発した。システムの校正は1μmポリスチレン微粒子を用いて行った。微粒子が溶液中で激しくブラウン運動する様子を時々刻々計測しボルツマン分布を適用して熱力学的に解析することにより微粒子に作用する3次元ポテンシャルを得た。さらに、ポテンシャルの空間微分から相互作用を求めた。4μmポリスチレン微粒子及び従来の方法では測定不可能であった250nm酸化チタン微粒子について、光の放射圧のレーザー光強度依存性を測定した。その結果、レーザー光強度が大きくなると、より強い放射圧が作用して狭い領域に微粒子が捕捉される様子が観測され、理論的予測と一致した。従って、本システムが相互作用の解析に有効であることが確認できた。
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