本研究初年度である本年の成果は以下の5点である。 (1)フェムト秒光パルスのタイプIカスケード非線形伝搬特性の理論計算 超短光パルスの2次非線形光学媒質中での伝搬特性を理解するため、数値計算を行った。時間ウォークオフおよび3次非線形効果まで含めた結合波方程式を導出し、4次のルンゲークッタ法を2次元に拡張した数値計算アルゴリズムを用いて数値計算を行った。 (2)BaB2O4(BBO)非線形結晶を用いたフェムト秒カスケード非線形位相シフトの測定 Z-scan法を用いてカスケード非線形効果を測定した。モードロック・チタンーサファイアレーザー(中心波長800nm)を用い、1mm厚のBBO結晶において0.3Piだけの位相シフトを得た。これは非線形屈折率にして1.5×10^-15[cm^2/W]程度の大きさであり、ガラスの約10倍程度大きい。 (3)BBO非線形結晶を用いたカスケード非線形効果によるフェムト秒光スイッチングの実現 マッハ・ツェンダー干渉系の片方のアームにBBO結晶を挿入した非線形スイッチング素子を構成した。数百ミリワットの入射パワーに対し、約半分程度のスイッチングコントラストを実現した。 (4)BBO、LiIO3(LI)非線形結晶を用いたフェムト秒光パルス圧縮 フェムト秒光パルスをカスケード非線形伝搬させると必ず自己位相変調効果が発生する。これを積極的に用いる応用としてパルス圧縮を行っている。現段階で120フェムト秒パルスを約半分の66フェムト秒までの圧縮に成功している。 (5)周期的ドメイン反転LiTaO3(LT)非線形素子の試作 今まで用いてきた角度位相整合配置に変わる、より大きな効果が得られるデバイスとして疑似位相整合素子があるが、タンタル酸リチウム結晶を材料としてその作製を始めている。現在、現在各種条件を変えたりしながら作製技術を蓄積している。
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