本研究で得られた主な成果を以下に要約する。 ・波長1064nm光の第2、第3高調波発生が可能なGdYCOB結晶にレーザー媒質Nd又はYbを添加した、自己高調波発生用のNd:GdYCOB、Yb:GdYCOB結晶を育成した。 ・透過スペクトルの測定から、Nd:GdYCOBは高調波波長の532、355nm光に大きな吸収を持つことがわかった。一方、Yb:GdYCOBはこれらの波長において吸収がないため、自己高調波発生用の材料として適していることが明らかになった。さらに、Yb:GdYCOBは波長975nmにおいて大きな吸収を持つことから、汎用の半導体レーザーを励起光源として使える有望な材料であることがわかった。また、Yb:GdYCOBの吸収端波長は250nmで、Yb無添加のものに比べて40nm長波長シフトしていることが明らかになった。 ・Yb:GdYCOB結晶は、950〜1100nmの広い波長域で蛍光を持つことがわかった。1030nm付近の波長が最も強く発光を発するが、1064nmの発振も十分に期待できることが明らかになった。また、広帯域の蛍光スペクトルを持つことから、フェムト秒パルスの発生などにも有望な材料であることがわかった。 ・GdYCOB結晶は発生した紫外光によって光損傷を生じ、出力低下が引き起こされる。そこで、レーザー損傷耐性の改善を目的として、大気中で結晶育成を行った。光損傷閾値はAr雰囲気で育成した結晶に比べて3倍以上向上していることがわかった。また、従来の結晶に関しても、結晶を加熱することで約1W程度の高繰り返し紫外光(62.5kHz)を得た。
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