本年度は主に高強度コヒーレントテラヘルツ光源の開発を行った。 70フェムト秒チタンサファイヤレーザーを励起光源に用い、超電導磁石のつくる強磁場中に置いたInAsから放射されるテラヘルツ電磁波をシリコンボロメーターでロックイン検波し、その放射強度を測定した。[110]軸に対して平行に磁場を印加した実験では、磁場が3T付近で飽和を起こした。この現象はどの結晶軸に沿って磁場を印加するか、あるいはどのような面方位をもつ半導体を使用するかによって大きく変化すると考えられるので、これらのパラメーターを網羅するように磁場印加方向を5通り変えて実験を行い、テラヘルツ電磁波発生に最適な配置を発見した。 次に偏光フーリエ干渉分光計とシリコンボロメーターを組み合わせた分光システムにより、磁場中のInAsから放射されるコヒーレントテラヘルツ電磁波のスペクトルを測定した。既に今までの研究から、磁場印加によりスペクトルは大きく変化することが判明しており、磁場強度により帯域が大きく変化する。様々な磁場配置に対して測定されたスペクトルを詳細に解析し、先の結果と併せて考察することにより、高帯域で高強度のコヒーレントテラヘルツ電磁波を得られるシステムの構築に成功した。この配置からはサブミリワット級のテラヘルツ電磁波が発生しているものと考えられる。現在、継続的に高出力化に努めており、励起レーザー光の入射角依存性や結晶軸依存性に関しても研究を進めている。最終的にはミリワット級のテラヘルツ電磁波の発生を目指す。
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