研究概要 |
空力の効果を考慮したトンネル内の列車の走行の安定性について調べるため,トンネルと列車の系を,円管と円管内の中心軸上を一定速度で運動する円形断面をもつ一様な弾性はりからなる系としてモデル化をおこなうと,弾性はりを伝播する波を記述する単一の非線形波動方程式を導出することができる.本研究では,導出された非線形波動方程式について,この方程式自身の性質および方程式の解の性質・挙動を,数値的および解析的に調べ,弾性はりの運動を明らかにすることを目指している.本年度は特に定常進行波解に焦点を絞り,その性質を明らかにすることを目的とした. 1.まず定常進行波解を仮定することにより得られる常微分方程式を,数値的に解くことをおこなった.方程式の各項の係数には,はりに関する物理量のパラメータや幾何的パラメータが含まれているが,これらのパラメータの値を新幹線の値に選ぶことにより,各項の係数を決定した.このことにより実際の現象との比較が少しでも有意なものになると思われる.このようにして決定したパラメータの下で,はりを伝播する波の速度を変化させ,この常微分方程式の解の様子を調べた.その結果,線形解が不安定となるパラメータ領域で,包絡孤立波解が存在することがわかった. 2.次に1.の結果を踏まえ,常微分方程式を空力効果をあらわす微小量を用いて漸近展開した.その結果,この方程式は漸近的に,定常な非線形Schrodinger方程式に一致することがわかった.また,この非線形Schrodinger方程式から得られる厳密解は,1.で数値的に得られた包絡孤立波解とよい一致を示した. 1.と2.で得られた結果,およびこの常微分方程式が1回積分可能であること等から,本研究で扱っている波動方程式は比較的性質のよい方程式であることが期待できる.次年度はこの方程式の厳密解や可積分性の問題にも取り組んでみたいと考えている.
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