研究概要 |
本年度は以下の項目の研究を実施した。 1.シリコン基板上に形成した折れ曲がるアルミ薄膜バンブー配線の角部を対象とし,同部における一定時間通電後のヒロック体積をエレクトロマイグレーション(EM)損傷支配パラメータを用いて予測する一方,通電実験を行った後原子間力顕微鏡により形成されたヒロック体積を計測した。折れ曲がる配線の角部においては,配線の折れ曲がり角度および角部から陽極端・陰極端までの長さの割合を変化させることにより,EM損傷の主要因子である電流密度,温度分布を変化させることができる。ヒロック体積の予測値と計測値を比較することにより,同支配パラメータの有効性をヒロック形成の観点から検証した。 2.前記研究項目1で扱った配線と異なり,実用の配線は絶縁物により被覆されている。そこで,表面にポリイミド薄膜を有するアルミ多結晶配線を用いた通電実験を行い,絶縁物の破壊形態およびヒロックの形成・成長形態の観察を電界放出型走査電子顕微鏡を用いて詳細に行った。絶縁膜を押し上げるように配線表面においてヒロックが形成・成長した。また絶縁膜のない配線の場合に比し,通電開始から損傷開始までの潜伏期間ならびに断線までの時間が増大した。以上より,絶縁膜被覆の配線においては,EMによる金属原子の蓄積に起因して配線内部に応力分布が形成されると考えられ,この応力が配線間絶縁物を破壊し,それに続くヒロックの形成・成長が短絡故障を発生させることがわかった。 3.前記研究項目2を踏まえ,実用配線における短絡故障の再現に欠かせない表面に絶縁膜を有する配線のEM損傷支配パラメータを定式化し,短絡故障のための数値シミュレーション手法開発に着手した。また短絡故障再現の基礎となる表面に絶縁膜を有する多結晶配線の断線故障シミュレーション手法の開発にも着手した。
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