研究概要 |
本研究では、環境共生形高分子材料の創製からその機械的安全性保証に関して2年間の実証的研究を実施した。本年度はPCにDLCを施した高機能化PCの開発に関して、下記の項目にしたがって研究を実施した。耐摩擦・摩耗性の向上を目的として、特に処理方法によるDLC薄膜のミクロ構造と摩擦・摩耗メカニズムの関係について,下記の実証的研究を行った. I.表面改質PCの創製 プラズマCVD装置およびイオン化蒸着装置用いて、DLC表面処理を施した供試サンプルを作成した。 III.トライボロジー評価システムによる実証的研究 前年度の研究で作成された表面改質PCについて下記の種々の試験法による実証的評価を実施した。 (1)トライボロジー測定装置(カロテスタボール研磨型磨耗試験機)を用いた実証的試験(潤滑性・耐磨耗性評価) (2)マイクロビッカース硬度試験(密着性評価) (3)マイクロスクラッチ試験(密着性評価) (4)SEMによる摩粍痕の定量的評価 本研究によって得られた結果は以下の通りである. (1)摩擦係数μは,プラズマCVD法によるDLC/PC材の場合未処理材に比べ約4/5に,イオン化蒸着法によるDLC/PC材の場合約1/3にまで低下した. (2)DLC薄膜をコーティングされたPC材の磨耗は,未処理材に比べ大きく低減されていた.ただし,摩耗過程において,プラズマCVD法によるDLC/PC材では初期段階で無秩序な薄膜の割れが発生し,イオン化蒸着法によるDLC/PC材では薄膜自体の磨耗後,すべり方向に垂直な円弧状の割れが発生した. (3)上述(2)の要因は,イオン化蒸着法によるDLC薄膜がプラズマCVD法に比べ,薄膜のミクロ構造に起因する高硬度,高強度,平滑性,さらには高い密着性を有しているためと示唆された.特に,イオン化蒸着法によるDLC/PCは,プラズマCVD法に比べ薄膜のせん断強さが優れているものと示唆された.
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