研究概要 |
物体の変形を計測する場合,どうしても平面内での変位やひずみを求める必要に迫られる事が多い.スペックル干渉法は,物体のこのような面内変形を非接触で測定できる数少ない方法の一つであり,対象物に何らの処理も行う必要がないのでモアレ法よりも優れている.特に,今後重要になると予想されるマイクロマシンやマイクロデバイスなどの材料強度評価では,対象物に光学格子を貼る事が困難なため,スペックル干渉計測が唯一の手段となる可能性が高い.申請者らは電子式レーザスペックル干渉計(ESPI)について,空間的分解能とコントラストを劇的に向上させる新方式(面内位相シフト計測法)の開発を行ってきた.本方法を用いるとデータの精度を大幅に向上させることができ,また変調に使用する素子やセンサを適切に選択すると,光波長以下のナノメータオーダー計測も可能であると考えられ,さらに従来は困難だった微小物体の面内変形計測も可能であると予想される.本研究では,この方法を光学顕微鏡に適用し,微小物体の面内計測を行うためのレーザスペックル顕微鏡を開発することを目的としている. 本年は既存のESPI装置に顕微鏡を組み込み,レーザスペックル顕微鏡を試作した.まずピエゾ駆動ミラー部の高精度化を,今回購入したレーザ変位計を用いて行なった.さらに,平行移動する物体の変位を,本レーザスペックル顕微鏡により計測し,その精度を確認した.さらに位相検出用のセンサをインラインCCDデバイスに変更し,位相検出の精度を高め,レーザスペックル計測法の性能の限界について調べた.また,レーザスペックル顕微鏡で得られた位相情報から,微小物体の変位とひずみを求めるアルゴリズムに関して検討した.本システムでは,スペックルの統計的性質より充分な輝度変化の得られないピクセルが確率的に存在してしまう.この不感帯ピクセルをうまく内挿しつつ,同時に変位とひずみを求める手法に関して検討を行なった.
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