機械・構造物がフレッティング疲労損傷を受ける場合、通常の疲労限度に較べてきわめて低い応力振幅であっても、10^8回以上の繰返しによりそれらが破壊する事例が報告されている。このような低応力、長寿命のフレッティング疲労破壊を防止するためには、機械・構造物の接触部やはめ合い部に発生する微細なフレッティング疲労き裂が破断に至るようなき裂に成長するかどうか判断することが重要である。本研究では、このような低応力、長寿命のフレッティング疲労き裂の進展挙動を明らかにするために、はめ合い内部のき裂長さを超音波探傷法によって評価することを目的とする。探傷法は水浸法を用いた。水浸法は非接触の超音波探傷法であり、トランスデューサの接触圧力に影響されない利点がある。今年度は、水浸法によりき裂を検出するシステムの構築、微小ドリル穴の探傷試験、フレッティング疲労き裂の探傷試験を行い、以下の成果を得た。 1)水浸法により直径40mm、長さ1000mmのはめ合い軸の検査が行えるシステムを構築した。 2)検出可能な最小の微小ドリル穴は、直径300μm、深さ約400μmであった。検出可能なき裂深さ1000μm以下、分解能100μm以下の目標値を満足させることができた。 3)はめ合い部を模擬した試験片を用いた場合、接触面より生じるノイズ・エコーのため、1)で検出可能であった微小ドリル穴も検出ができなかった。そのために、はめ合いの内面から超音波を当てる方法も試験を行った。この結果、1)と同じ微小ドリル穴を検出することができた。 4)フレッティング疲労き裂は深さ4mm以上であれば検出が可能であったが、実際のき裂長さとの誤差は70%あった。これは、き裂先端が閉口して超音波をほとんど反射しなかったため、また、超音波をき裂の真上から当てたために超音波を反射するき裂の面積が少なかったためと考えられる。今後は、き裂の開口量と検出感度の関係、超音波の入射方向と検出精度の関係を明らかにし、探傷精度を向上する方法について検討を行う。
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