研究概要 |
本年度得られた成果は次の通りである.(1)微分幾何学的場の理論に相互作用場の概念を導入することによりマルチスケールモデリングの枠組みを構築し,塑性における各階層間の相関を陽に記述するための定式化を行った.各階層間の絶対スケールはスケール比を導入することで考慮されている.(2)転位レベル(原子オーダー)と結晶粒レベルの階層間におけるスケール(転位パターン)は自発的に発生しかつ変形の進行に伴い発展する.これは一種の自己組織化過程と捉えることができる.同過程を合理的に記述する方法論として,転位・欠陥場に対する場の理論的アプローチを提案し,同方法に基づき微視的理論から現象論方程式を厳密に導出した.(3)(2)において導出された方程式が,弾性場の影響を考慮した2相合金の相分離モデルに類似していることを指摘し,同類同性に基づき,転位セル形成過程に関するモデルを提案した.(4)上記のマルチスケールモデリングの枠組みと転位自己組織化モデルを基に,結晶塑性理論に基づくモデル(仮想セルモデル)を構築し,構成式に組み込んだ.種々の条件下で数値シミュレーションを実施し,変形に伴う仮想セルサイズの変化を調べ,それを通じて巨視的応力応答に対する微視的機構関し考察を加えた.(5)衝撃荷重下における種々の実験を実施し,応力応答についてシミュレーション結果と比較することで(4)のモデルが妥当性を確認した,以上得られた成果を国内外の各種学会にて発表すると共に,ICES2Kにおいて「塑性におけるマルチスケールモデリングとシミュレーション」と題するシンポジウムを企画・開催した.さらに,米国マサチューセッツ工科大学において転位パターン形成に焦点を当てた4回のシンポジウムをProf.Argon(MIT)と〓共に企画している.内2回は既に開催されたが,本シンポジウムで得られた成果は当該分野の発展に大きく寄与することが期待される.
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